研究概要 |
院内感染起因菌である緑膿菌は異物・薬物トランスポーターで抗生物質などを細胞外に排出する事によって多剤耐性を獲得する。本研究ではこのトランスポーターをナノマシーンとして捉え今年度は次の様な実験を行い成果を得た。 (i)異物・薬物トランスポーターの基質認識ドメインの同定 トランスポーターMexB及びMexYは各々に選択的にβ-ラクタム剤及びアミノグリコシドを輸送する事が知られている。そこでMexBとMexYのどのドメインが基質を認識し輸送しているのかを明らかとするため、先ずMexBの膜外ドメインとMexYのそれとを取替える実験を行った。その結果膜外ドメイン(MexB)-膜貫通ドメイン(MexY)の雑種蛋白はβ-ラクタムを選択したけれどもアミノグリコシドは輸送しなかった。この事実はこの種のトランスポーターでは細胞質膜から外側に大きく突出したドメインが基質を認識し輸送する事が明らかとなった。この結果は今日までの能動輸送の常識を覆す結果となった。 (ii)トランスポーター、MexA,B-OprMの発現を調節する蛋白のDNA結合ドメインの解析 MexA-MexB-OprMオペロンはリプレッサー蛋白MexRによってその発現が制御されている。そこでこのリプレッサーがどのドメインでDNAと結合するのかを明らかとするため、MexRのドミナントネガティブ変異株を多数分離した。これらの株はMexRが機能するために二量体を形成する事には支障がないが、DNA結合能に障害がある事がMexRとMexOPDNAの結合実験から明らかとなった。そこでこれらの変異を調べたところ、それはアミノ酸置換変異株であることがわかった。変異の位置をMexRのX線解析像と重ね合わせてみると、11種類25個の変異はDNA結合部位のみならず多くはDNA結合部位近くのα-ヘリシクス、β-シート及びループ部位に存在する事が明らかとなった。この事実はDNA結合ドメインを構成するMexRの部位は3つのα-ヘリシクス、2つのβシート及び1つのウイング部位から構成されている事が明らかとなった。-以下省略- この様に2003年度には多くの新しい知見が得られた。
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