院内感染の主要起因菌である緑膿菌に発現する異物・抗生物質排出トランスポーターのX線結晶構造解析、サブユニット相互作用、発現調節及び病原性発現因子の研究などを行った。先ずX線結晶解析ではMexA及びOprMの2ヶのサブユニット構造を決定することが出来た。MexAサブユニットは別名膜融合蛋白とも言われ、グラム陰性菌の内膜と外膜を結合するものと考えられていた。構造解析の結果4ヶのドメインからなる細長い蛋白であることが世界で初めて明らかとなり、これはMexB及びOprMを連結する分子クランプであると結論した。OprMサブユニットは三量体構造を有し外膜を貫通するβ-バレルとペリプラズムで管を形成するα-バレルより構成されることが明らかとなった。ところがα-バレルの先端は完全に閉塞状態であり、またβ-バレルの孔も抗生物質を通すに充分の大きさでないことが明らかとなった。従って、管の両端は別の力によって開かれなければならない。このエネルギーはMexBによりもたらされるものと考えるが、その機序は今後の課題として残った。一方MexAB-OprMの会合の実験では、例えばMexBにのみ標識をつけ、この標識をマーカーにMexBを精製するとMexA及びOprMが共精製されることが明らかとなった。一方、三成分のうちMexA-MexB、MexA-OprM及びMexB-OprMなどの二成分のみを発現するとMexA-OprMは相互作用するが、他の組合せでは相互作用は確認できなかった。これらの実験から、MexAはポンプアセンブリーの要をなす分子クランプの役割をするものと結論した。排出ポンプサブユニット蛋白の発現調節に関しては、MexXYの発現調節因子MexZがオートリプレッサーであることを、蛋白質・DNA結合実験から明らかとした。以下省略
|