異物代謝酵素群は、外来物質の体内侵入やストレス刺激により転写レベルで発現誘導される。本研究では、この制御に関与する未知因子の単離同定を目的に、ゼブラフィッシュを用いた突然変異体スクリーニングを試みることにした。具体的には、種々薬剤に対する異物代謝酵素GST-piの転写誘導が異常になる変異系統の探索である。誘導条件を検討した結果、4日齢幼魚における親電子性試薬ジエチルマレイン酸及び多環芳香族3メチルコラントレン処理がスクリーニングに適切であることがわかった。そこで、変異剤ENUを用いた突然変異体スクリーニングを開始した。現在、変異剤処理した雄魚と無処理の雌魚とを交配して得たF1世代を育成している。今後、F3胚の段階で、薬剤に対する応答能を調べる予定である。当初はF2胚で表現型を観察する一倍体スクリーニングを模索していたが、応答能の検出が4日齢以前では困難であることがわかったため、通常の二倍体スクリーニングを行うことにした。一方、上記スクリーニングではGST-piの発現を免疫染色法で調べる予定であるが、スクリーニングの簡便化・迅速化を目指し、薬物に応答して発光するトランスジェニックフィッシュの作製を試みた。まず、ゲノムDNAライブラリーをスクリーニングし、GST-pi遺伝子の翻訳開始点上流約3.5kbの予想転写制御領域を得た。次に、薬剤処理に対する応答配列がこの領域内にあるかどうかを、ゼブラフィッシュ胚を用いた一過性のGFPレポーター解析をGFPで調べた。その結果、このGST-pi駆動型GFPレポーター構築が親電子性物質にも多環芳香族にも応答することがわかった。そこで、現在、この構築をゲノムに安定にもつトランスジェニックフィッシュの系統化を進めている。今後は、得られた系統のなかからより応答性の高い系統を選択し、次世代の突然変異体スクリーニングに活用する予定である。
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