古細菌のエーテル脂質カルドアーキオールを簡略化したモデルを設計し、C21のアルキル鎖の両端をトリエチレングリコールで修飾し、一端をスルフヒドリル化した人工細胞膜の合成を行った。基本的にはこれまでやってきた11-ブロモウンデセンとトリエチレングリコールを出発原料とし、DMF中NaHでアルコキシドを発生させて縮合後、水酸基を保護した後にWittig反応で炭素-炭素結合を形成した。続いて一端をチオアセチル化し、脱保護し、人工細胞膜の構成成分であるPEGアルカンチオールを合成した。合成したPEGアルカンチオールは2mMのエタノール溶液とし、金薄膜を蒸着したガラスチップを浸漬することで自己組織化膜を形成させた。このチップをXPSと大気中AFMにより表面を観察することによって自己組織化膜の確認をした。またこの膜構成成分を用いて基板上で膜タンパク質を再構成させることができるかどうか検討するために、緩衝液中でリポソームを形成させることができるかどうかを試みた。しかし、溶解性も悪くリポソームの構成ができなかったので、末端の水酸基のリン酸化を試みている。膜タンパク質としては古細菌のエネルギー変換装置であるバクテリオロドプシンを選択し、サントリー生物有機化学研究所よりその産生株の譲渡を受け、培養系を立ち上げた。
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