脊椎動物を特徴づける脊椎骨の発生過程は、硬節の形成、この硬節から軟骨細胞に分化、この軟骨を鋳型として骨細胞が硬骨を形成する3つの過程に分けられ、Pax-1/9が硬節、scleraxisやSox9が軟骨細胞、CBFA1が骨細胞の分化にそれぞれ必須の役割を担っている。一方、脊椎動物に近縁なホヤやナメクジウオは脊椎骨をもたず、Pax1/9が鰓裂でのみ発現している。脊椎動物Pax1/9も鰓裂で発現していることから、Pax1/9は従来鰓裂でのみ機能していたが、脊椎動物で新たに硬節での機能を獲得したと考えられる。さらに、脊椎骨細胞の分化に関わるscleraxis、Sox9やCBFA1などの遺伝子が一つの転写制御システムに取り込まれ、脊椎骨という新たな組織が進化したと考えられる。 まずPax1/9の硬節での発現の進化を新しいエンハンサーのゲノム上での分子進化と結びつけることを試みた。その結果、ホヤの鰓列での発現に必要なシスエレメントはPax1/9遺伝子の第一イントロンの中に存在することがわかった。これまでにそのエレメントを約500bpにマップしている。また、ナメクジウオのPax1/9の第一イントロンにも同様の活性があるかについて、イントロンをナメクジウオのものと置き換えて実験したが、活性を検出できなかった。ナメクジウオの鰓裂での発現に関わるエレメントは第一イントロン以外の領域にあるか、ナメクジウオのシスがホヤのトランス因子と相互作用できなかった可能性が考えられる。 また、scleraxis、Sox9やCBFA1について、ホヤから相同遺伝子を単離した。現在、発現を解析中である。
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