初期発生過程には、多くのRNA結合性蛋白質がさまざまな形で働くものと考えられる。脊椎動物では、いくつかの組織特異的RNA結合性蛋白質が同定され、その役割が解析されているが、全体としてRNA結合性蛋白質群の時間的・空間的発現様式の情報は不十分であり、RNA情報発現制御システムが発生分化過程にどのような役割を担っているのか包括的理解を目指すにはほど遠い状況である。本研究では、ゼブラフィッシュを用い、RNA結合性蛋白質をコードする遺伝子群を効率的・網羅的に同定し、脊椎動物の胚発生過程における発現様式の情報を集積していくことを主な目的とした。 ESTデータベース情報をもとにRNA結合性蛋白質をコードするゼブラフィッシュ遺伝子をいくつか同定し、in situハイブリダイゼーションによる発現様式の解析、蛋白質の機能解析を進めた。 1.nPTB相同遺伝子およびstaufen相同遺伝子を同定した。いずれも神経系などに発現が観察された。 2.sebは筋肉系、水晶体、耳胞等に発現しており、(GU)_n配列に結合することが示唆された。 3.etr-3は主に神経系で発現する。BrulやEtr-1と同様にURE配列に結合し、選択的スプライシング制御因子として働くことを見いだした。 4.hermes-1は心臓原基や網膜に発現しており、(CA)_n配列に結合することによって選択的スプライシング制御因子として働くことがわかった。また、翻訳制御因子としても働く可能性が示唆された。 5.tenr遺伝子は、卵形成過程において、成熟の進んだ卵母細胞の表層領域に母性mRNAが存在することがわかった。
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