研究概要 |
本研究では,カタユウレイボヤの網羅的cDNA解析のデータ(配列および発現)を活用し,発生における細胞運命決定のメカニズムを総合的に捉えることをめざした。 1.カタユウレイボヤ卵割期胚の14749クローン(5660クラスター)の配列解析を完了した(解析は京大・佐藤矩行研究室とアカデミアシークエンシングセンターのご協力による)。このうち1200以上のクラスターについてin situ解析を行った。調べた遺伝子の半数以上は,まったく新規の配列であったり,これまで発生生物学分野で注目されてこなかったものであった。またそれらの遺伝子の発現パターンも,これまでの知識から説明できない複雑なものが多く,発生における細胞の運命決定機構について多くの示唆を得た。 2.ホヤ胚を用いたRNAiの技術をほぼ確立した。この手法により卵割期に発現する割球特異的転写因子を含む数十の遺伝子の機能解析を行った。RNAiによる発現抑制は起こったが,機能阻害や形態異常は顕著ではなかつた。反応経路がredundantであるためなのかRNAiの技術的な問題なのか現在は不明である。 3.米国Joint Genome Institute(JGI)が公表しているゲノム配列を検索して,割球特異的転写因子の遺伝子の上流調節領域を同定した。現在これをクローニングし,レポーター遺伝子を作製中である。 4.当初計画にはなかつたが,京大・佐藤矩行教授,遺伝研・五條堀孝教授・中澤真澄博士との共同研究として,ホヤ胚のcDNA約10000クラスターを載せたマイクロアレイを作製した。今後、これを利用してさまざまな発生制御遺伝子のスクリーニングを行う。
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