研究概要 |
コムギは倍数性により進化してきたことを特徴とする。本研究では、以下の2点を研究計画とした。(1)コムギの生活環の代表的な組織でEST解析を行う:コムギの生活環における10の代表的な組織からcDNAライブラリーを構築する。cDNAクローンを任意に選び、塩基配列を決定する。各組織でえられた大量のcDNAの塩基配列を比較解析し、倍数性コムギで発現する遺伝子の特徴を探る。現在、各組織併せて約7万クローンの両側からの塩基配列を決定し、各組織での遺伝子発現パターンを特徴付けた。(2)6倍性パンコムギのTACライブラリーを構築し、パンコムギの遺伝子を含むゲノミッククローンを選抜する:アグロバクテリウムの系を用いてイネ科植物を直接形質転換できるTACベクターを開発した。このベクターを用い、パンコムギの3ゲノム分をカバーするTACライブラリーを構築した。また、ライブラリーから、プールしたプラスミドDNAを鋳型としてPCR反応により目的の遺伝子を含むTACクローンを効率よくスクリーニングするシステムを開発した。パンコムギで初めて3種ゲノムA,B,Dそれぞれから出穂性遺伝子Hdをクローニングし、各遺伝子の構造を解析した。ゲノム間で遺伝子発現の役割が分担されており、それはプロモーターのシス配列に依存していた。イネの遺伝的背景でコムギの巨大DNA断片中の遺伝子が発現されるか調べるため、イネをTACクローンで形質転換し、コムギDNA断片が導入されていることを確認した。
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