研究概要 |
本課題においては、平成12年度の特定領域研究(C)の同名課題において開発を行ったシステムを用いて、ヒトやマウスを含む様々な真核生物と原核生物のゲノムDNA配列データを国際データベースなどから定期的に収集し、ヒトゲノムに対して種内・種間の大規模比較解析を行った。その結果、ヒトゲノム内におびただしい数の重複領域が見出され、その分布はランダムではなく、例えば、セントロメア近傍領域に集中して見られるといった様々な特徴が明らかにされた。このような特徴は、核内における染色体の局在性や染色体間の位置関係などについての示唆を与えている。また、ヒトゲノム配列内に存在するヒト固有遺伝情報を発見するために、ヒトに最も近い種であるチンパンジーのゲノム配列決定の第一段階としてチンパンジーBACクローンマッピングを行った。このマッピングでは、64,116個のチンパンジーBACクローンの両端配列(BES)のみを決め、その配列をヒトゲノム配列と比較することによって、各チンパンジークローンの物理位置を正確に推定するという、これまでに無い独自の方法を採用した。このマッピングの結果から、ヒトゲノムとチンパンジーゲノムとの間にこれまで知られていたものも含む多くの大規模な構造の違いが見出され、また、BESの詳細な比較解析とPCRを用いた解析から、ヒトゲノム内の変わりやすい領域、高度に保存している領域、ヒト固有領域を見出すことが出来た。このマッピングの結果を利用することでチンパンジーゲノム配列を決定するのに必要な最小のクローンを選別することが可能になり、より網羅的なヒト固有遺伝情報の探索の基礎が築かれた。また、ヒトを含む多様な生物種のゲノムの比較解析を行うことにより、生物の進化史に関する網羅的情報を引き出すことを試みた結果、真核生物の起源に関する新しい知見を得る事が出来、新説を発表した。
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