研究概要 |
研究の目的と進め方:ヒト本態性高血圧は複数の遺伝子が関わる多因子疾患と考えられている。疾患原因遺伝子解明において、マウスを用いたphynotype-drivenアプローチは有用な戦略のひとつである。本研究は、このアプローチよりマウス血圧量的遣伝子座(QTL)を明らかにするため、a)近交系マウスを利用し血圧QTLを明らかにすること、b)ENUによる血圧変異マウスを作製することを目的として研究を進めている。 2001年度の研究の当初計画:a)近交系マウスにおける心血管量的形質の定量化、近交系マウスの血圧QTL解析および候補遺伝子の機能解析、b)ENU投与量の決定とG1世代の作製 2001年度の成果:a)13系統の近交系マウスにおける基礎血圧値、心拍数および左心室重量を定量化し(一部データをBMC genetics誌に公開)、今後の心血管系QTL解析の基盤を整備している。C57BL/6Jと、A/J間子孫から得られた血圧QTLの成果はGenomic8誌およびCurr Hypertens Rep誌に掲載された。CBA/CaJとBALB/c間子孫より新たに血圧QTL解析を実施し、2つの血圧QTLを同定した(投稿中)。このマウス血圧QTLはラットおよびヒト高血圧QTLと一致した。b)ENU投与方法は週1回80mg/kgを3週連続方式が良好であることが確認された。現在G1世代の子孫140匹においてにて血圧変異マウスを探索中である。 国内外の成果の位置づけ:マウス血圧QTL解析の報告を継続しているグループは我々とthe Jackson LaboratoryのPaigen -Labのみである。また、Jacob HJはNature review(genetics)誌(3:33-42,2002)の多因子遺伝の特集において高血圧QTLが種を超えて保存されていることを我々の論文(Genomics 71:70-77,2001)を引用し紹介している。 達成できなかったこと、予想外の困難、その理由:ENU処理G1世代の数が少ない。しかし投与量が決定したため、今後G1数を増加させることが可能となった。 今後の課題:マウス心血管系QTLを更に数多く明らかにする。ENU処理G1世代を多数作製し、血圧変異マウスを発見する。
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