研究概要 |
ヴェトナムから口唇裂・口蓋裂の患者211人とその親(少なくとも片親)と親類290人をコントロールとして濾紙にしみこませた血液のサンプルを採取することができ(DNA解析に関して長崎大学、愛知学院大学の倫理委員会の承認あり)このサンプルを用いて候補遺伝子H-RYK(レセプター型チロシンキナーゼ)について患者DNAの変異解析を行い、続いて見いだされた多型部位に関して290人の内部コントロールの遺伝子型を決定し、単一多型部位での相関解析、ハプロタイプを用いての相関解析、および伝達不平衡テストを行った。 患者の変異解析の結果、CAT→CGT(A743G)(H248R)とTAC→TGC(A1355G)(Y452C)の2個のミスセンス変異と、5箇所の多型部位を見いだした。ミスセンス変異は親から伝わったアリルのみに変異が見いだされ、コントロールサンプルには見られなかった。H248Rは膜貫通部位と細胞内ドメインの境界部位にあり、Y452Cはよく保存された細胞内チロシンキナーゼ第2ドメイン(Hanks kinase second motif)の中に存在している。今後、この2つの変異が機能的な喪失を起こす変異かどうかを変異蛋白の発現プラスミドを細胞に導入してsoft agar上でのコロニー形成能を測定して決定する。 多型部位を用いて単一多型部位での相関解析、ハプロタイプを用いての相関解析では、統計学的に有意な差は得られなかった。イントロン13内の多型部位を用いた伝達不平衡テストにて唯一p-value=0.01を得た。相関解析の結果はp-value=0.16であり有意な差でなく伝達不平衡テストの結果の確定のためには、両親のそろったさらなるサンプルの解析が必要と思われる。 今後は、H-RYKのシグナル伝達系の下流に存在する、EPHB2,EPHB3,などを解析する予定である。
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