Prader-Willi症候群(PWS)責任領域であるヒト15番染色体q11-q13およびマウスにおける相同領域7Cにおける刷り込み地図の作成を行うために、刷り込み遺伝子の発現、DNAメチル化、ヒストンアセチル化のマッピングを行った。マウスに関しては、7C領域を欠失しているPWSモデルマウス、ASモデルマウス、および正常対照マウス由来細胞株の供与を受け、実験を行った。 結果の概略としては、遺伝子発現、DNAメチル化に関しては、ヒトとマウスとにおいて大きな違いはなく、種を超えてよく保存されていた。しかし、抗アセチル化ヒストンH3およびH4抗体を用いたクロマチン免疫沈降法を行った結果は異なったパターンが得られた。父性発現を示す刷り込み遺伝し群に関しては、ヒトにおいてはSNURF-SNRPNにおいて親由来特異的なヒストンアセチル化を同定したが、他の刷り込み遺伝子ではヒストンアセチル化は低レベルであり、親由来特異的な違いははっきりしなかった。これに対して、マウスではSnurf-Snrpn以外の刷り込み遺伝子においても親由来特異的なヒストンアセチル化の違いを認めた。この結果はヒトとマウスにおける刷り込み機構の違いを示唆すると考えた。中枢神経において母由来特異的刷り込みをうけるUBE3Eは今回用いた細胞においては、ヒト、マウスいずれにおいてもヒストンアセチル化に親由来特異的な相違は認めなかった。 次の段階として、現在、モデルマウスの輸入手続きを行っている。モデルマウスを用いて、組織特異的、発生時期特異的な刷り込み地図の作成を行う予定である。
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