研究概要 |
本研究は、増殖・分化・形態といったある特定の細胞形質発現を担う遺伝子群を(1)細胞への効率良いcDNA発現ライブラリーの導入;(2)目的とする細胞形質を獲得した細胞の選択・選別;(3)部位特異的DNAリコンビナーゼによるcDNAの染色体からの切り出し・回収;(4)回収されたcDNAの再導入による細胞の再形質転換;から構成される過程を繰り返し、目的の形質発現に関わる遺伝子群を包括的に単離するシステムを樹立することを目的とする。本研究では既に、酵母由来のKw DNAリコンビナーゼを異所性に誘導発現するIL-3依存性細胞株BaF/Kwを樹立するとともに、3'LTR内にKwリコンビナーゼの認識配列を持つMarXレトロウイルスベクターを用いcDNA発現ライブラリーを作成している。本年度は、MarX-lacZレトロウイルスをBaF/Kwに感染させた後、Kwリコンビナーゼを誘導発現させることにより染色体DNAからのlacZ遺伝子切り出しに成功した。また、レトロウイルスcDNA発現ライブラリーをBaF/Kw細胞に感染後IL-3非存在下に培養し、自律的増殖能を獲得した細胞プールを複数樹立した。Kwリコンビナーゼの誘導発現により、自律増殖能を獲得した細胞プールからのレトロウイルスベクター由来cDNA回収を進めている。一方、本システムをより一般化するため、HIV由来TATトランスダクションドメインを融合したKwリコンビナーゼを作成した。この融合蛋白がTATドメイン依存的に細胞膜ならびに核膜を自由に通過する能力を有することを確認した。組み換えTAT-Kw融合蛋白を,Kwリコンビナーゼ認識配列を有するテスト遺伝子に作用させたところ、TAT-Kwは機能的リコンビナーゼとして機能した。現在、TAT-Kwによる染色体からの遺伝子切り出しのための至適条件を検討している。
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