現在まで6種類のMODY原因遺伝子が同定されているが、これらの遺伝子は同一カスケード内で相互に機能連関したHNF転写因子をコードする。しかも発生原基が膵β細胞と共通である小腸ですべて発現している。そこで膵β細胞と小腸の共通発現遺伝子群を網羅すべくESTを大量集積してきた。 さらにインスリン産生関連遺伝子を網羅するため、ヒト膵島腫瘍細胞からESTを約1万個以上追加採取した。現在まで獲得した合計25753個のヒト膵島腫瘍細胞ESTの分類化、集団化(クラスタリング)を施行し、膵島発現遺伝子データベース(EPConDB)と照合した結果、3103種類の既知遺伝子と3054種類の未知遺伝子を獲得した。そして新たに3384個のESTが膵島に発現していることも明らかにできた。さらに機能別分布も施行し、遺伝子発現・蛋白生成に関与するESTが既知のものでは最も多く256種類を占めることを確認した。そして転写因子のESTのみからなる独自のマイクロアレイを作成して解析し、膵、肝、小腸に共通に発現する12個の新規糠尿病候補転写因子を獲得しており現在遺伝子解析を進めている。一方ラットの膵島発現遺伝子も網羅しており、既知未知合わせて約11000種類を獲得しているが、既知のものより優先的に現在in-situ hybridizationを施行し、膵島特異的に発現する遺伝子を約40個同定している。今後これらについても糖尿病候補遺伝子として遺伝学的検討を加えていく。 さらにHNF転写因子を効率良く発現させるためにアデノウィルスの系を用いて、膵β細胞腫瘍株でHNF-1α、1βなどの野生型とドミナントネガティブ変異をそれぞれ過剰発現させてmRNAを抽出しマイクロアレイ解析によって発現レベルが変化する遺伝子群を同定し、先の転写因子、膵島特異的発現遺伝子群と合わせ糖尿病候補遺伝子プールを構築し関連解析も進めている。
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