本研究では、1型糖尿病を自然発症するKDPラットにおける責任遺伝子を同定し、その発症機序を分子レベルで解明するとともに、当該遺伝子のヒト1型糖尿病における関与を明らかにすることを目的とする。 これまで、KDPラットの1型糖尿病について遺伝解析を行い、MHC領域以外の原因遺伝子座Iddm/kdp1をラット第11染色体上の約3cMの領域内に限定し、ポジショナルクローニングの手法によって原因遺伝子の同定を進めてきた。最近、候補遺伝子を見出し、KDPラットに特異的な変異を同定した。解析の結果から、KDPラットにおける1型糖尿病の遺伝的感受性は作用の強い2つの遺伝因子、特定のMHCハプロタイプとIddm/kdp1でほぼ規定されていると考えられた。 今年度は、MHCとIddm/kdp1遺伝子の組み合わせと病態との関連を詳細に解析するために、種々のMHCハプロタイプを有するラット系統にIddm/kdp1遺伝子を組み込んだコンジェニックラットの作出を始めた。また、ヒト1型糖尿病におけるIddm/kdp1相同遺伝子の変異および多型の関与を検討するために、約100例の1型糖尿病者における遺伝子変異の検索およびSNPのスクリーニングを行った結果、種々の変異およびSNPを含む多型を同定した。 今後、同定した遺伝子変異およびSNPについて非糖尿病者における頻度との比較ならびにMHCハプロタイプとの組み合わせと発症との関連を検討し、ヒト1型糖尿病における関与を明らかにする。
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