研究概要 |
肝細胞の小胞体に存在するUDP-グルクロン酸転移酵素は、薬物代謝の第2相に関与する主要な酵素である。本酵素はビリルビンやフェノールを基質とするグループと、主にステロイドを基質とする2群に大別されている。ビリルビンなどを基質とするグループは一つの遺伝子(UGT1)からスプライシングの違いにより、多数の基質特異性を異にする酵素タンパクを発現している。本研究はUGT1遺伝子から発現される酵素群の多型と、その多型が薬剤の副作用に及ぼす影響について、PCRによる塩基配列決定と培養細胞を用いた遺伝子発現系で検討し、同時に薬剤性肝障害患者の遺伝子解析を行い、得られた結果にもとづき、臨床応用できる副作用の予知法を確立することを目的として行った。その結果、以下の3点について明らかにした。1.UGT1由来の酵素について多型をしらべ、変異が酵素活性に与える影響にUGT1A1、UGT1A3については検討を終了した。UGT1A6,UGT1A10については多型の解析とその日本人での頻度の検討を終了し、現在多型により酵素活性がどの程度低下するかを培養細胞で発現ベクターを用いて検討中である。2.薬剤性肝障害を一定の頻度でおこす薬が、どのタイプの酵素で代謝されるのか、また遺伝的に代謝活性が低い場合に肝障害が起きるかどうかについても検討した。重篤な肝障害を起こす前立腺癌治療薬フルタミドの主代謝物2-アミノ-5-ニトロ-4-トリフルオロメチルフェノールがUGT1A1とUGT1A6で代謝されること、日本人に固有で比較的高頻度でみとめられるUGT1の変異(Y486D)が酵素活性を10%以下に低下させ、副作用発現に関与する可能性がわかった。3.DNAチップをもちてUGT1に比較的高頻度にみられる日本人に固有な変異が迅速に検出できることが確認された。
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