GIPは、糖質や脂質の経口摂取に伴い消化管から分泌され、膵β細胞のGIP受容体を介してインスリン分泌を促進する。GIP受容体欠損マウスの解析からGIPは節約遺伝子(thrifty gene)として働くことを明らかにした。したがって、日本人など従来脂肪摂取の少ない農耕民族ではこのようなインクレチン作用が弱く、肥満は来たさないがインスリン分泌障害を主体とした糖尿病が発症し、欧米人など従来脂肪摂取が多い牧畜民族ではインクレチン作用が強く肥満を来たしインスリン抵抗性を主体とした糖尿病が発症すると仮説をたて、その実証を行っている。まず、GIP受容体欠損マウスと肥満モデル動物のobマウスを交配し、これらのダブル欠損マウスを作製したところ、obマウスの脂肪蓄積はGIPシグナルが欠損することによって減少し、インスリン抵抗性や糖代謝も改善した。したがって、GIPシグナルが減弱でインスリン分泌の低下している状態では、GIPシグナルを活性化することによって糖代謝は改善し、GIPシグナルが亢進しインスリン抵抗性が増大している状態ではGIPシグナルを遮断することが糖代謝の改善につながり、糖尿病の病態によってGIPシグナルの意義が異なることを明らかにした。現在、昨年度同定したGIP遺伝子のプロモータ領域のSNPを用いて、臨床症状(インスリン分泌地能、インスリン感受性、BMIなど)とGIPの関連を検索している。腸管に発現するGIP等の遺伝子解析により、食事と糖尿病・肥満との関連が明らかになることが期待される。
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