cGMP関連遺伝子多型の検索とその機能解析―関連研究への応用―

2003 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 13204043
• 研究機関: 京都大学
• 研究代表者: 井上 元 京都大学, 医学研究科, 講師 (20260606)
• 研究分担者: 伊藤 裕 京都大学, 医学研究科, 助教授 (40252457) ; 斉藤 能彦 奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (30250260) ; 中尾 一和 京都大学, 医学研究科, 教授 (00172263)
• キーワード: ナトリウム利尿ペプチド / ノックアウトマウス / 高血圧症 / 心室 / 心肥大 / 内皮 / eNOS / 遺伝子

研究概要

ナトリウム利尿ペプチド受容体であるguanylyl lyclase(GC)-Aのノックアウトマウスでは、食塩非感受性高血圧や著しい心室の肥大と線維化が認められ、GC-A遺伝子のコピー数に関して表現型にはgene-dose effectが認められる。一方、内皮型一酸化窒素合成酵素(eNOS)遺伝子のノックアウトマウスでも、高血圧症が認められた他、冠動脈の虚血再灌流モデルで梗塞サイズが野生型よりも大きくeNOS遺伝子が梗塞の伸展に保護的に作用していることも報告されている。従って、本態性高血圧症や心肥大の発症・進展に、細胞内サイクリックGMP(cGMP)をセカンドメッセンジャーとしてもつナトリウム利尿ペプチド系やNO系が関与していることは明らかであるがヒトにおける意義は証明されていない。そこで本研究では、ナトリウム利尿ペプチド系やNO系の遺伝子上の多型を検索しその機能解析を行うことで、本態性高血圧症や心肥大との関連を追究している。これまでにヒトeNOS遺伝子変異を見いだし、その多型が高血圧と相関することを明らかにした。また、eNOS遺伝子転写領域の多型が転写調節蛋白との結合に重要であることも直接証明した。一方、GC-A遺伝子転写調節領域における遺伝子多型のうち、転写開始点より+22〜+29bpの領域の8bpの欠失変異のリポーターアッセイを行い、この8塩基欠損多型は遺伝子転写活性を約30%にまで低下させる変異であることを確認した。また、転写開始点上流-227bpの転写領域の10回及び11回のCT繰返し多型は、転写活性に変化を与えないことを確認した。さらに、新規の遺伝子多型について検索を行い、新たに数種類の遺伝子転写活性を変化させる多型を見つけている。これらの遺伝子多型については、300例ずつの高血圧症例、正常血圧症例を目標としてゲノム収集を進め、その臨床的意義について検索中である。

研究成果

• [文献書誌] A.Yasoda, K.Nakao et al.: "Overexpression of CNP in chondrocytes rescues achondroplasia through a MAPK-dependent pathway."Nat Med.. 10(1). 80-86 (2004)
• [文献書誌] K.Kuwahara, Y.Saito, et al.: "NRSF regulates fetal cardiac gene program and maintains normal cardiac structure and funcution"EMBO.J. 22. 6310-6321 (2003)
• [文献書誌] Y.Adachi.Y.Saito, et al.: "Angiotensin II type 2 reseptor deficiency exacerbates heart failure and reduces Servival following acute myocardial infarction in mice"Circulation. 107. 2406-2408 (2003)
• [文献書誌] K.Yamahara, H.Itoh, et al.: "Significance and therapeutic potential of natriuretic peptides/cGMP/cGMP/cGMP-dependent protein kinase pathway in vascular regeneration."Proc.Natl.Acad.Sci.USA. 100. 3404-3409 (2003)
• [文献書誌] M.Sone, H.Itoh, et al.: "Different differentiation kinetics of vascular progenitor cells in primate and mouse embryonic stern cells."Circulation. 107. 2085-2088 (2003)
• [文献書誌] T.Yurugi-Kobayashi, H.Itoh, et al.: "Contribution of transplanted vascular progenitor cells derived from embryonic stem cells to adult neovascularization in proper differentiation stage."Blood. 101. 2675-2678 (2003)