研究概要 |
研究代表者の春日らは、インスリン抵抗性を示すマウスを遺伝子操作によって作製した。すなわち、転写因子であるSTAT3を肝特異的に欠損したマウスを作製すると、肝における糖新生系酵素の発現が上昇し、肥満とインスリン抵抗性を呈することを見い出した。すなわち、生理的にSTAT3を活性化するリガンドが存在し、これらが耐糖能の正常化に関与していると考えられた。一方、インスリンによってPIS-キナーゼの下流で活性化されるPKCλを肝特異的に欠損したマウスでは、肝における脂肪含量が低下しインスリン感受性が良化していることを見い出した。この時、肝におけるSREBP-1cの発現量は低下しているので、インスリンによるSREBP-1cを介しての脂肪合成にPKCλが関与している可能性が示された。春日らは、候補遺伝子アプローチとして、PGC1α,CPT1A, SREBP1、FATP4をとりあげ、それらのSNPを同定するとともに、2型糖尿病者450名、正常対照者360名を用いて、同定したSNPについてcase-control相関解析を行った。しかしながら、いずれのSNPも2群間でアレル頻度に有意差はなかった。2型糖尿病者に限って臨床データと遺伝子多型との関係を検討した所、CPT1AのひとつのSNPと肝細胞内の脂肪含量との間に有意な相関を認めた。 研究分担者の岩本らは、日本人256組の罹患同胞対を用いて連鎖解析を行い、染色体上の12ヵ所で2型糖尿病の発症に有意な部位を認めた。また、10万のSNPを用いて、全ゲノム網羅的に糖尿病腎症の発症に関与する遺伝子をcase-control相関解析で同定するアプローチにより、SLC12A3<Solute Carrier Family 12 (Sodium/chloride) Member 3>を糖尿病腎症発症の候補遺伝子として同定した。
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