慢性関節リウマチおよび膠原病における疾患遺伝子の同定と作用機序の研究

2003 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 13204059
• 研究機関: 神戸大学
• 研究代表者: 塩沢 俊一 神戸大学, 医学部, 教授 (40154166)
• 研究分担者: 三浦 靖史 神戸大学, 医学部, 助教授 (60346244) ; 塚本 康夫 神戸大学, 学術情報基盤センター, 教授 (30031149) ; 石川 齊 神戸大学, 医学部, 教授 (30107958) ; 駒井 浩一郎 神戸大学, 医学部, 助手 (40304117)
• キーワード: 関節リウマチ / rheumatoid arthritis / 疾患遺伝子 / disease gene / 遺伝素因 / genetic predisposition / DR3,death receptor 3 / 関節破壊

研究概要

本研究では、DR3が関節炎に関わることの証拠として、(1)マウスのコラーゲン誘導関節炎に対して抗DR3抗体治療が有効であること、(2)ヒトにおけるDR3遺伝子変異例の臨床所見を対照と比較すると、発症年齢は差がなかったものの、DR3変異例には関節置換術が高頻度(p<0.033)に見出されたことから、DR3遺伝子変異が疾患の発症にではなく増悪に関わる疾患遺伝子であると結論した。以上より、疾患遺伝子DR3の検索は、RAの早期診断と予後を予測するものと考えられた。
実験の詳細は次の通りである。すなわち、DR3遺伝子上にnt564(A to G);Asp159Gly, nt630+622(del14),nt631-538 (C toT),nt631-391(AtoT),nt631-243(A to G)のSNP4箇所および核酸欠損1箇所の変異に起因する変異型DR3分子(デスドメインを持たない)が正常DR3分子とヘテロ三量体を形成し、変異DR3分子は正常型DR3によるアポトーシス誘導をドミナントネガティブに抑制した。変異は多発RA家系の10%に見出されRA家系に遺伝的に集積していた。そこで本研究では、DR3変異が実際に関節炎の誘導に寄与していることを、一方で動物実験レベルでマウスのコラーゲン誘導関節炎の、発症時期ではなく、関節炎の程度を抗DR3抗体が抑制することから示した。また他方、ヒトにおいてDR3遺伝子変異陽性例(n=31)の臨床所見を対照例(n=684)に比較して調査することによって、発症年齢には差が見出せなかったが、初発から20年後までの関節置換術の頻度(p<0.033)および2回以上関節置換術を受けた者の頻度(p<0.036)がDR3変異保有者において有意に多いことから、DR3遺伝子変異が疾患の発症ではなく増悪に関わる疾患遺伝子であることを証明した。さらに、FISH およびfiber FISH法を用いて、DR3遺伝子が近傍に重複して存在し、遺伝子重複の頻度がRA患者で健常者よりもより高頻度であることを見出した。この知見は、DR3遺伝子変異の疾患の発症と増悪に及ぼす効果を知る上で重要であり、今後さらに検討が必要と考えている。
以上の結果を踏まえて、結論として、DR3はRAの増悪に関わる疾患遺伝子で、DR3遺伝子変異の同定はRAの早期診断と予後予測に寄与すると考えられた。

研究成果

• [文献書誌] Sakaki T, Shinozawa S, et al.: "Metabolism of 26,26,26,27,27,27-F6-la, 25-dihydroxyvitamin D3 by CYP24:Species-based difference between humans and rats."Biochem Pharmacol. 65. 1957-1965 (2003)
• [文献書誌] Hikasa M, Shinozawa S, et al.: "p21 is down-regulated in conjuction with up-regulation of c-Fos in the lymphocytes of rheumatoid arthritis patients."Biochem Biophys Res Commun. 304. 143-147 (2003)
• [文献書誌] Muto M, Shinozawa S, et al.: "Generalized pustular psoriasis : strategy for identification of psoriasis susceptibility gene."Arch Dermatol Res. 295. 60-62 (2003)
• [文献書誌] Kawasaki H, Shinozawa S, et al.: "Human wee 1 kinase is direct transactivated by and increased in association with c-Fos/AP-1:Rheumatoid synovial cells overexpressing these genes go into aberrant mitosis."Oncogene. 22. 6839-6844 (2003)
• [文献書誌] Matsuno H, Rhinsawa S, et al.: "Quantitative Assessment of hand radiographs of rheumatoid arthritis interobserver variation in a Multicenter radiographic study."J Orthop Sci. 8. 467-473 (2003)
• [文献書誌] Komai K, Shiozawa S, et al.: "Characterization of novel alternative splicing variants of the mouse MCF-2 (DBL) proto-oncogene."Biochem Biophys Res Commun. 309. 906-909 (2003)
• [文献書誌] 塩沢俊一: "膠原病学"丸善株式会社. 582 (2003)