研究課題
糖尿病をおこす常染色体劣性遺伝疾患ウオルフラム症候群の原因遺伝子WFS-1の機能について、WFS1ノックアウトマウスを作製し解析を進めた。WFS1欠損マウスから単離した膵島は、タプシガルギンやツニカマイシンなどの薬物による小胞体ストレス誘導に対してアポトーシスによるDNA断片化が増強し、小胞体ストレスに対して脆弱であった。WFS1欠損による膵β細胞脱落機構を解明するため、6週齢マウスより単離したWFS1欠損膵島、野生型膵島のtotal RNAを用いてDNAマイクロアレイにより発現遺伝子の網羅的解析を行なったところ、様々な小胞体ストレス関連遺伝子の増減が認められた。小胞体ストレス関連遺伝子については、real time PCRにより変動を定量し、小胞体関連分解において重要なEDEM、CHOPなどで有意な増加が確認された。また、WFS1欠損膵島において、スプライシング型XBP1 mRNA発現の約2倍の増加が認められた。Western blotでは、GRP94は野生型群と比較して明らかな増加傾向は認められなかったが、eIF2α、リン酸化eIF2αはともに野生型群と比較して増加傾向を認め、HRD1、CHOPは共に有意な増加を認めた。このように、WFS1欠損では、XBP1の増加に示される転写誘導系、eIF2αに示される翻訳抑制系および、EDEMやHRD1の増加に示される小胞体関連分解系の3つの小胞体ストレス応答経路の増強が膵島において認められた。その結果、CHOPの誘導もみられアポトーシスに至るものと考えられた。また、ウェルナー症候群は早期老化症候群の代表的疾患であり、老化、成人病のモデル疾患として注目されている。2型糖尿病は加齢疾患の代表的なものであり、ウェルナー症候群遺伝子(WRN遺伝子)の異常はその発症に影響する可能性がある。そこで、2型糖尿病におけるWRN1367Cys/Arg多型の関連について検討したところ、WRN遺伝子の1367Argアレルが日本人2型糖尿病発症に対する防御的な遺伝素因であることが示された。
すべて 2004
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