若年性遺伝性高血圧におけるインスリン抵抗性関連遺伝子の追究―不死化リンパ芽球を用いた細胞レベルのインスリン抵抗性―

2001 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 13204076
• 研究種目: 特定領域研究(C)
• 研究機関: 慶應義塾大学
• 研究代表者: 猿田 享男 慶應義塾大学, 医学部, 教授 (70051571)
• 研究分担者: 江口 高 慶應義塾大学, 医学部, 助手 (10317109) ; 林 松彦 慶應義塾大学, 医学部, 助教授 (60129608)
• キーワード: 高血圧 / インスリン抵抗性 / 遺伝 / インスリン受容体 / リンパ芽球

研究概要

平成12年度の「ゲノム多型情報を基盤とした多因子疾患の発症に関与する遺伝的要因の解明」の公募研究、平成13年度の「ヒト疾患における遺伝要因のゲノム的解析と分子病態の解明」の計画研究において、「若年性遺伝性高血圧におけるインスリン抵抗性関連遺伝子の追究」を行い、以下の中間的な結果を得た。遺伝子解析および細胞機能解析に関するインフォームドコンセントを得た237名の健康診断対象者において、家族歴を有する高血圧(または血圧正常高値)群から18名、高血圧および心血管疾患の家族歴が無く、血圧が110mmHg以下の正常低値群から25名の不死化リンパ芽球細胞ラインを樹立した。高血圧群は、血圧低値群と比較してBody mass indexが有意に高く、また、インスリン値および総コレステロール、LDLコレステロールが有意に高値を示した。若年男性の母集団から、高血圧の家族歴の有無と血圧値を基準に選抜を行うことにより、若年性遺伝性高血圧には肥満傾向を背景とした個体レベルでのインスリン抵抗性が合併していることが明らかとなった。
また、高血圧群8名、血圧低値群7名の不死化リンパ芽球を用いて細胞レベルでのインスリンによる糖の取りこみ能を測定したところ、細胞増殖能では両群間で差を認めなかったが、糖の取り込み能は高血圧群において血圧低値群と比較して有意に低下していた。また、糖輸送担体を介した糖の取り込み能に関しても高血圧群で血圧低値群に比して有意に低下し、インスリン刺激によりその差は更に顕著となった。さらに、母集団のうち178人による検討で、インスリン感受性指数と、インスリン受容体遺伝子のNsi Iによる制限酵素多型の間に関連が見られることが明らかになり、現在さらに検討を進めている。

研究成果

• [文献書誌] Ohno Y, Suzuki H, Yamakawa H, Nakamura M, Kato Y, Saruta T.: "Correlation of sodium-related factors with insulin sensitivity in young, lean, male offspring of hypertensive and normotensive subjects"J Hum Hypertens.. 15. 393-399 (2001)
• [文献書誌] Ohno Y, Suzuki H, Yamakawa H, Nakamura M, Saruta T.: "Insulin sensitivity and calcium homeostasis in young, lean, normotensive male subjects"Hypertens Res.. 23(5). 433-440 (2000)
• [文献書誌] Ishii T, Hirose H, Saito I, Nishikai K, Maruyama H, Saruta T.: "Tumor necrosis factor alpha gene G-308A polymorphism, insulin resistance, and fasting plasma glucose in young, older, and diabetic Japanese men"Metabolism. 49. 1616-1618 (2000)
• [文献書誌] Hayashida T, Ohno Y, Otsuka K, Suzawa T, Shibagaki K, Suzuki H, Ikeda H, Saruta T.: "Salt-loading elevates blood pressure and aggravates insulin resistance in Wistar fatty rats : a possible role for enhanced Na+ -H+ exchanger activity"J Hypertens.. 19. 1643-50 (2001)
• [文献書誌] Kato Y, Hayashi M, Ohno Y, Suzawa T, Sasaki T, Saruta T.: "Mild renal dysfunction is associated with insulin resistance in chronic glomerulonephritis"Clin Nephrol.. 54. 366-73 (2000)