本研究は、高血圧の遺伝素因解明に向けた一つのアプローチとして食塩感受性に着目した。従来より食塩感受性の頻度に少なからず人種差が存在すると推定されてきたが、その定義や測定方法が報告間で必ずしも一致しないために相互に評価することが困難であった。そこで我々は先ずパイロット・スタディを行い、簡便かつ実用的な2週間のプロトコールを作成し、そのうえで日本人健常者95名で食塩感受性の評価を行ってきた。 本年度は、(1)候補遺伝子に関するSNP discovery:食塩感受性の候補遺伝子32個について、日本人48人をdirect sequenceする形でSNPs discoveryを行った。400箇所程度のSNPsを同定し、そのうち2/3は既存のデータベースに未登録のものであった。(2)人種差を考慮したハプロタイプの構築:白人、黒人、日本人100名ずつのgenotypingを行い、各遺伝子座におけるSNPsの連鎖不平衡係数およびハプロタイプの構築を進めた。(3)食塩感受性および高血圧における成因的意義の検討:現在、これらの遺伝的マーカーを活用して、日本人食塩感受性パネル(95名)と一般人口集団1200名余でのassociation studyを行っている。 これまでに二次性高血圧の原因として同定された遺伝子が、いずれも腎臓での水電解質輸送に関与するものであり、特にナトリウムイオン(あるいは食塩)の体内動態と血圧上昇との関連を究明することが高血圧遺伝子の研究の鍵を握ると考えられる。こうした背景において、上述した簡便な臨床的評価法の開発とともにSNP解析を含めた包括的なアプローチが重要なテーマと位置付けられている。
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