ゲノム解析によって明らかになった塩基配列情報を元に、系統的に簡便にかつ迅速に機能解析を進めることができる網羅的な機能解析手法の開発を目的として研究を進めている。本年度は、かねてより解析を開始していた赤色蛍光蛋白質DsRedの細胞内動態の解析が大きく進展した。DsRedは当初予定していた1)動物細胞を用いたプロモーター解析、2)Tet制御発現系の改良と応用、3)外来DNA可視化システムの構築のいずれのプロジェクトにおいても、これらの研究を強力に推進できる重要なツールとなるので、予定を変更し、DsRedの解析とその結果に基づくDsRedの改良を最優先で推進した。その結果、以下のような成果を得ることができた。 1)DsRed蛋白質は哺乳動物細胞内においてユビキチン化-プロテアソーム系を介して、迅速に分解されているため、細胞内に十分な量の蛋白質の蓄積が起こりにくく、蛍光を検出することが難しいことを見出した。 2)1)の結果を踏まえて、分解系を免れるDsRedの開発に成功した。これを用いると、フローサイトメトリーにおいてほぼ100%の細胞で蛍光を検出することが可能となり、蛍光強度も数十倍に上昇していた。これを緑色蛍光蛋白質EGFPと組み合わせて利用することにより、フローサイトメトリー(FCM)によって、簡便に2カラー解析を行うことが可能となった。 3)2カラーFCMが可能になったことを活用し、わずか数日で2種類の遺伝子を独立に哺乳動物細胞に導入するRapid Stable Double Transfectionが可能になるEBVベクターセットの開発に成功した。
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