研究概要 |
本研究は、二成分制御系を介した転写プロファイルの解析、無機物質同化系を制御する転写因子の同定と機能解析、概日時計遺伝子を介したゲノムワイドのグローバルな転写制御の分子機構の解析を行い、ラン藻(シアノバクテリア)に特有の転写制御ネットワークを明らかにすることを目的とする。本年度、得られた主な成果は以下の通りである。 1.絶対光独立栄養型ラン藻シネココッカスSynechococcus PCC 6301のゲノムの全塩基配列(2,696,258bp)を決定した。この中に2525個のタンパク質遺伝子をアノテートした。二成分制御系遺伝子37種を同定した。 2.シネココッカスSynechococcus PCC 6301のゲノムの全遺伝子および遺伝子間領域をカバーするオリゴDNAチップを作製した。 3.二成分制御系遺伝子37種の破壊株を作製した。 4.比較ゲノム解析により硝酸還元酵素の活性発現に必要な新規遺伝子を同定した。 5.Synechococcusのゲノムワイドな概日発現に関して,KaiCが時計遺伝子のみでなく,ほとんどの遺伝子のプロモーターに抑制的に働くことを示した。また,kaiBCオペロンの概日発現には必ずしも特異的cisエレメントが必要なわけではないことを明らかにし,概日リズムの発振モデルに新たな展開をもたらした。 6.シアノバクテリアでは時計遺伝子の転写翻訳フィードバック制御が概日振動の発生に必須の過程ではなく、KaiCの自己リン酸化-自己リン酸化サイクルが概日振動のコアプロセスであることを強く示唆した。
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