研究概要 |
本研究は、二成分制御系を介した転写プロファイルの解析、無機物質同化系を制御する転写因子の同定と機能解析、概日時計遺伝子を介したゲノムワイドのグローバルな転写制御の分子機構の解析を行い、ラン藻(シアノバクテリア)に特有の転写制御ネットワークを明らかにすることを目的とする。17年度までに得られた主な成果は以下の通りである。 (1)絶対光独立栄養型ラン藻シネココッカスSynechococcus PCC 6301株の全ゲノム配列(2,696,255bp)を決定した。この中に、2つのrRNA遺伝子オペロン(rrnAとrrnB)、45のtRNA遺伝子、4つの低分子RNA遺伝子、およびを2525個のタンパク質遺伝子をアノテートした。二成分制御系遺伝子を37個同定した。全タンパク質遺伝子の10%の遺伝子は他の生物種のゲノムに存在しないことを明らかにした。さらに、シネココッカスSynechococcus 6301株のゲノムの全遺伝子および遺伝子間領域をカバーするオリゴDNAチップを作製した。 (2)他のラン藻種にはなく、Synechococcus 7942株/6301株にのみ存在する遺伝子群の中に、潜在的な硝酸輸送活性をもつ新規トランスポータの遺伝子(syc1147)とその活性を制御する二成分シグナル伝達系の遺伝子群(syc2277-syc2278)を同定した。 (3)時計関係の研究での最大の研究成果として,連続暗期中で転写・翻訳活性が極端に低下し,kai遺伝子の転写翻訳が完全に停止してもKaiC蛋白質のリン酸化振動が完全に持続することを発見した。さらに、KaiABC蛋白質の試験管内リン酸化振動発生を世界で初めて明らかにした。これらの研究は,シアノバクテリアに限らず哺乳類,植物を含む生物時計の分子機構の常識を一変させ,大きな反響を呼んだ。
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