研究課題
多くの生物では、様々な生理現象の活性が約24時間の周期で変動することが知られている。これは生物時計と呼ばれ、地球の自転に伴い24時間周期で繰り返される光や温度の変化に適応するための機構と考えられる。我々は近藤氏(名大・院・理)との共同研究で、藍色細菌で24時間振動を生み出す分子機構の中核遺伝子kaiABCを同定している。本研究はリズム発振遺伝子kaiABCの生み出す振動情報がどのような遺伝子ネットワークを経て下流の遺伝子群へ伝達されていくのかをDNAマイクロアレイを用いて網羅的に解明することを目的とする。DNAマイクロアレイを用いて遺伝子発現の概日リズムをモニターするためには、莫大な数のマイクロアレイが必要とされる。しかし、現在市販されているマイクロアレイは非常に高価であり、これらを用いて概日リズムの研究を行うのは経済的に限界がある。そこでまずオリゴDNAを用いた安価なマイクロアレイの開発を行った。その結果、1)オリゴアレイにより発現量が非常に低い時計遺伝子kaiABCの発現を検出できる、2)HPLC精製を省略したオリゴDNAを用いてもシグナル強度の低下はほとんどない、3)オリゴ鎖長が45塩基でも十分な強度のシグナルを得られることを明らかにした。2)、3)の改良により、アレイの作製コストを約4分の1に削減できた。今後はかずさDNA研究所により全ゲノム塩基配列が決定された好熱性藍色細菌Thermosynechococcus elongatusのオリゴアレイを作製し、生物時計研究に応用する。好熱性であるためタンパク質の熱安定性が高く、別途計画しているプロテオミクス解析やタンパク質のX線結晶構造解析に非常に有利であるため、これらをアレイの結果と合わせることにより生物時計の全体像が明らかにできると考えている。
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