研究概要 |
1.相同組換えによる1ステップ遺伝子破壊実験系において,破壊株の出現頻度を10^3-10^4cfu/μgDNA程度にまで高めることができた.古細菌Aeropyrum pernixゲノム上には7つのメチル化修飾酵素遺伝子があるが,それらすべてを組換えタンパク質として調整し混合した.その酵素混合物により導入するDNA断片を予めメチル化処理することにより宿主の制限修飾系バリアを効果的に乗り越えることが可能となった. 2.古細菌ゲノム特有のorphan genesのうち,無作為に選んだ約90の遺伝子に対してその破壊を試みた.現在までに67の遺伝手破壊株が作製できた(全ORFの2.6%にあたる).これらの破壊株について,表現型の評価(増殖温度,低温ショック応答,UV感受性,栄養要求性,増殖基質の資化性,各種阻害剤の影響)を進めている.ΔAPEO461株がUV高感受性であること,さらにはゲノム上に人為的に導入した二本鎖DNA切断(DSB)を修復できないことが明らかになっている. 3.A.pernix集団内で,ゲノム上の特定の遺伝子の構造に多型を形成させる可動遺伝因子として"動くイントロン(mobile intron)"を発見した.その伝播戦略に必須な因子として,イントロン自身にコードされる部位特異的DNAエンドヌクレアーゼを二つ同定した(I-Ape IおよびI-Ape II).これらは20塩基前後の二本鎖DNA塩基配列を認識・切断するrare-cutting enzymeであった.この二つの酵素は,ゲノム地図作製等に有用であると考えられることから,宝酒造から市販されることが決定されている. 4.産業上有用な種々の酵素のゲノム規摸での探索とそれらの生化学的性質の解析を並行して進めた.現在までに,未報告の5塩基対の配列を認識する新規制限酵素Ape KI(遺伝子はAPE0558)や分泌型セリンプロテアーゼ(APE0263)をはじめとする17種の酵素の解析を終えた.いずれも高い安定性を有しており遺伝子工学,食品加工,臨床検査等の分野で実用可能と考えられる
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