研究概要 |
遺伝子の特異的転写は、遺伝子の近傍に存在するシスエレメントに複数の転写因子が結合することによって、実現されていると考えられる。極めて多くの転写因子をコードすると考えられる遺伝子がこれまでに同定されているが、それらの転写因子のほとんどについては、その機能が明らかにされていない。本研究の目的は、酵母をモデルとし、特異的配列の認識によって転写調節に関わっていると考えられる蛋白群について、それらの細胞内での全結合配列をDNAアレイを用いて同定するという研究法を開発し、転写ネットワークの全容を明らかにすることである。 今年度は、20の様々なタイプの転写因子について、HAタグを結合した遺伝子を相同組み替えで酵母に導入し、タグを利用して濃縮したDNAを用いたゲノム中の全in vivo結合配列の同定をマイクロアレイでおこなった。その結果は下記の3つのグループに分類された。 1.MATα2,MCM1のように十分な濃縮が確認でき、全ゲノム中の標的配列を検出できていると考えられるもの(特にMATα2は、全ての既知標的遺伝子の特定ができた)。 2.YDR451,YOX1のように、有意な結果は得られたが、濃縮の程度が十分でないため標的配列を確実に検出できないもの。 3.CRZ1のように特異的濃縮が確認できなかったもの。 これらの結果から本研究法の有用性が明らかになったとともに、約200と考えられる酵母転写因子について解析を行うことによって転写ネットワークの全容を明らかにできる可能性が示された。
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