DNAメチル化はインプリンティングの確立・維持には重要と考えられており、インプリンティングセンターを同定するためにCpG islandの差次的DNAメチル化領域(DMR)を示す領域に着目し、体細胞のみならず生殖細胞(卵子および精子)でメチル化されている領域を探索した。そのために500kbに及ぶインプリンティングドメインKip2/Lit1のDNAメチル化解析を行った。10ケ所のCpGアイランドの中で、p57^<kip2>のプロモーターやその上流、Lit1プロモーターがDMRであることがわかった。p57^<kip2>は体細胞で父性アリルがメチル化を受けていたが、配偶子のメチル化はなかった。一方、Lit1は卵子のメチル化ならびに体細胞の母性アリルのメチル化がみられた。しかも、卵子の解析ではCpGのみならず、CpAやCpTのシトシンにもメチル化が見られた。Lit1の近傍には父性染色体特異的にヌクレアーゼ感受性領域が見られた。これらのことはLit1が配偶子メチル化を受けた唯一の領域であり、このサブドメインのインプリンティング制御領域と考えられた。一方、このLit1領域の体細胞レベルでのターゲティングを試みたが、相同組換え体の組換え頻度が3x10^7以下であり、ターゲティングを示す形質転換体は得られなかった。一方、このサブドメインに隣接する領域に新たなインプリンティング遺伝子Obph1が見つかり、インプリンティング領域はまだ続いていることも分った。このように大規模に及ぶDNAメチル化の解析の例はまだなく、さらにLit1の卵子DNAでのメチル化はCpGのみならず、CpAやCpTのシトシンにもメチル化が起きることもインプリンティングでは初めて示された。
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