研究概要 |
本年度の研究計画に基づいて以下のような研究業績をあげました。 (1)DNAマイクロアレイによる大腸菌の遺伝子発現量測定 DNAマイクロアレイを用いて、有機溶媒等大腸菌に有害と考えられる液体に接触させ、その際の遺伝子発現を測定した。この際、有機溶媒の種類などによって発現される遺伝子群に大きな違いが出ることが分かった。また、有機溶媒の毒性に対する耐性度のことなる大腸菌に種類を用意し、同一の有機溶媒に接触させると、同じ挙動をとるもの、大きく挙動が異なるものなどの遺伝子群が観察できた。 (2)適応共鳴理論(ART)による発現遺伝子のグループ化(クラスタリング) 酵母の胞子形成時の時系列マイクロアレイデータ(P.BrownらScience282,699-705(1998))に対して、従来から行われている統計的手法の階層的クラスタリング、k平均アルゴリズム、自己組織化ネットワークと今回あらたに適用するART(適用共鳴理論:知識情報処理手法の一つ)による解析を行った。これらの手法を先のデータに適応したところ、生化学的知見に基づく結果に最も近い結果が得られたのは、ARTであった。マイクロアレイ実験では、遺伝子の発現量に、0.5から2倍程度の誤差があると言われている。実際の実験データに人工的にこれらの範囲で誤差を加えたデータを作成し、前出の手法を適応した。ARTによって形成された遺伝子のグループは、人工的な誤差を加えない場合とほぼ同じ結果が得られたが、他の手法を用いた場合、人工的誤差を加えると遺伝子のグループは大きく異なるものとなった。このことから、ARTはマイクロアレイの遺伝子発現データのクラスタリング手法として、もっとも適した方法であることが確認できた。
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