研究概要 |
立体構造のデータベース解析 (1)All-βタンパク質の立体構造分類:トポロジーの‘Ring'型の構造と‘Zipper'型の構造に注目する新規のAll-βタンパク質の立体構造分類法を提案した。実際、All-βタンパク質の92%が‘Ring'型を、60%が‘Zipper'型の構造を取っている。この分類結果は、大きなcontact orderを持つAll-βタンパク質のフォールディング経路との関わりがある。 (2)確率的アラインメント法:アミノ酸配列と立体構造を確率的に表現する確率的アラインメント法を開発した。有限温度におけるエントロピーのバイアスは周期境界条件によって防がれている。この方法を用いて、円順列配列を持つTIM-barrelとβ-trefbil構造の内部対称性と、遠い進化的類縁関係を正しく検出することができた。 分子機能のシミュレーション解析 (1)超並列高速分子動力学計算ソフトウェアMARBLEの開発1超並列計算機で高速な計算を可能にする分子動力学計算プログラムを開発した。そこでは、部分剛体法がsymplecticな積分の元で実現している。また、様々なアンサンブル、NPT, NPAT and NPγT、を実現するアルゴリズムが十蔵されている。 (2)水チャネルアクアポリンファミリーの分子動力学シミュレーション:分子動力学シミュレーションを4種類のアクアポリン(AQP1,AQPZ, AQP0, GlPF)について実行した。その結果、水の透過効率は、GlpF〜AQPZ>AQP1>>AQP0となり、チャンネルのサイズ、GlpF>>AQP1>AQPZ>>AQP0と異なっていた。これは水透過では、長距離の相関に基づくsingle-file性が重要であるためであると解釈された。 (3)分子結合に伴うタンパク質構造変化の線形応答理論:基質結合による構造変化を線形応答理論に基づいて記述する理論を提案した。これは、リガンド結合を摂動と考え、応答関数が平衡状態のゆらぎによってあたえられるとするものである。この理論の妥当性をいくつかの結晶構造について示した。 立体構造ダイナミクスの実験的解析 (1)中性子散乱スペクトルの解析方法の開発:中性子非弾性散乱におけるBosonピークの起源をタンパク質ダイナミクスの低温における動的構造転移の観点から明らかにした。
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