研究概要 |
本年度の研究により、アルツハイマー病の脳に蓄積するアミロイドβタンパク質(Aβ)を軽減させる理論的方法が明らかになった。まず、Aβを蓄積させない酵素であるαセクレターゼの本体が、ADAM 9,10,17,19の4種類の酵素であることが、cDNA導入実験とdsRNAによるRNAiの実験により明らかになった。このうち、ADAM9,10,17の3種で、αセクレターゼ活性の90%を説明できることがわかった。これによって、酵素特異的な活性化剤の探索が容易になった。 次に、βセクレターゼとして報告されたBACE1の阻害剤を用いて、αセクレターゼ活性を上げることができないかを検討したところ、フェニルノルスタチン化合物であるKMI compoundsのいくつかに、その活性が認められた。すなわち、αとβセクレターゼは単一基質を奪い合っており、Aβの沈着を抑えたいならば、αセクレターゼを活性化することも可能性の一つであることがわかった。しかしながら、現在までに報告されたものはすべて、細胞では効果がない。そこで、疎水性アミノ酸の導入など、各種の阻害剤を検討したところ、KMI-370に細胞での効果が認められた。 最後に、ワクチン療法を検討した。Aβ経口ワクチンの基礎実験のため、Tobamoウイルスベクターを用いてAβをGFP融合タンパク質として、タバコ、トマト、ピーマンの葉に発現させた。発現量は、1gの葉当たり100μgと免疫実験には十分量あると考えられ、現在、経口投与の効果をマウスを用いて検討中である。
|