研究の目的:我々の目的は、アポリポ蛋百E(アポE)が中枢神経細胞内のタウ蛋白のリン酸化を調節していることを、実験動物レベルで示すことである。 研究結果: 1)アポEノックアウトマウス脳における神経細胞内のタウ蛋白のリン酸化度 まず我々はリン酸化タウ特異的抗体によるウェスタンブロッテイングや免疫組織化学を用いて、アポEノックアウトマウス脳における神経細胞内のタウ蛋白のリン酸化度を野生型マウスと比較したが、予想に反して明らかな差は見られなかった。 2)ダブルノックアウトマウスの作製とタウ蛋白リン酸化度の評価 リーラーマウスやヨタリマウス脳においては、中枢神経細胞内のタウ蛋白が高度にリン酸化されていることが知られている。そこでリーラーマウスやヨタリマウスをアポEノックアウトマウスと交配し、ダブルノックアウトマウスを作製した。タウ蛋白のリン酸化度を見た結果、リーラーマウスにおいてはアポE遺伝子Doseが低くなるほどタウ蛋白のリン酸化度は高くなることが分かった。一方ヨタリマウスにおいては、アポE遺伝子Doseにかかわらずタウ蛋白のリン酸化度は一定であった。このことはアポEが、神経細胞表面のVLDL ReceptorやApoE receptor2を介して、タウ蛋白のリン酸化を調節していることを示している。 3)タウ蛋白リン酸化機構 リーラーマウスにおけるアポE遺伝子Doseと様々なタウ蛋白リン酸化酵素活性を比較したところ、アポE遺伝子Doseが低くなるほど、GSK3β活性が上昇し、タウ蛋白リン酸化度の上昇と平行することが分かった。一方、Cdk5を代表とするその他のリン酸化酵素活性には変化は見られなかった。 結論:以上より、アポE(マウスアポE)はVLDL RcceptorやApoE receptor2を介して、GSK3β活性を調節することにより、タウ蛋白のリン酸化を制御していることが証明された。
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