これまで、ミトコンドリア依存性アポトーシスにおけるアダプター分子Apaf1を欠損するマウスを作成し、Apaf1が胎仔脳に強く発現することやApaf1欠損胎仔ではニューロンのアポトーシスが生じずニューロンの蓄積による脳の変形が生じることを報告してきた。本研究の目的は、Apaf1欠損神経上皮細胞、ニューロン、グリア細胞に様々なアポトーシス誘導刺激を加え、アポトーシス抵抗性を指標に、これらの細胞におけるミトコンドリア依存性アポトーシスの関与を解析することである。 Apaf1欠損胎仔よりえたニューロンをbFGF存在下で4日培養し、この後抗がん剤エトポシドやキナーゼ阻害剤スタウロスポリンで刺激したところ、Apaf1欠損細胞では野生型に比べ細胞死抵抗性、およびカスパーゼ活性化の低下がみられ、これらの刺激によりApaf1依存性アポトーシスが活性化することが示された。さらに、同じ細胞にNMDA刺激を加え興奮性細胞死を誘導したところ、Apaf1欠損細胞において若干の細胞死抵抗性が見られ、NMDA刺激によるカルシウム上昇依存性の細胞死にもApaf1の関与が示唆された。さらに、同じ細胞に小胞体ストレス刺激を誘導する目的でthapsigarginを加えたところ、やはりApaf1欠損細胞において細胞死抵抗性が見られた。小胞体ストレスにおいては、カスパーゼ12が活性化することが報告されているが、詳細なアポトーシス誘導機構は明らかではないため、カルシウム依存性アポトーシス誘導経路とともにApaf1を介したアポトーシス経路の関与を詳細に解析していく予定である。
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