研究概要 |
約500家系の家族性パーキンソン病についてパーキン遺伝子の変異分析を行い,劣性遺伝の家系の約60%にパーキン変異が認められることを明らかにした.残りの40%の家系の一部に,染色体1番に連鎖する家系を見いだした.また一見優性遺伝に見える家系の中にも,約10%にパーキン遺伝子の変異をホモあるいは複合ヘテロの状態で有する家系のあることを明らかにした.更に若年発症孤発例の約13%にパーキン遺伝子変異を見いだした.更にパーキンがユビキチンリガーゼの一種であることを明らかにした.パーキンと特異的に結合するユビキチン結合酵素UbcH7とパーキンのメッセンジャー発現をラット脳にて解析し,胎生19日から両者とも発現が見られ,両者の分布は極めて一致していることを明らかにした.またパーキンは,Golgi装置を経て軸索輸送小胞に結合し,シナプス小胞に運ばれ,その膜に存在することを明らかにした.更にパーキン蛋白の基質候補として,22kDa-α-synuclein, PAEL-receptor, CDCrel-1を同定した.またこれらの物質が,パーキン遺伝子変異を有して死亡した症例の脳に蓄積しているかどうかを解析し,前2者は蓄積が認められるのに対し,後者はパーキンと結合はするが,蓄積はせずパーキンの基質とはならないことを明らかにした.このことは,パーキン蛋白には,ユビキチンリガーゼとしての機能の他に,神経伝達に関連した機能の存在を示唆し,今後この方面の研究の必要性が認識できた.またノックウアウトアニマル,トランスジェニックアニマルの作製に取り組んでいる.
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