研究課題
アミロイドβによる神経原線維変化形成機構アルツハイマー病発症には脳老化が生じていることが前提となるであろうこと。及びFTDP17の変異は脳老化を促進するであろうことからFTDP17変異タウトランスジェニックマウスは脳老化を示すマウスであると仮定した。そこで、これまでに作成したV337Mトランスジェニックマウスにアミロイドβを注入し神経原線維変化を形成させることで、これをアルツハイマー病のモデル動物として捉え、そこにおける神経原線維変化形成機構を検討した。ダイマーより大きい凝集体を持つアミロイドβを3ヶ月令マウスCA1領域に注入すると4週後にCA3,CA4にリン酸化タウ陽性、銀染色陽性神経細胞が出現する。生化学的検討ではβアミロイドによってSDS-不溶性タウが出現した。更にはシナプスマーカーであるシナプトフィジンの抗体反応性が減少とゴルジ染色のdendriteの枝分かれ及びdendritic spineの減少が示された。更に4週間後では神経原線維変化とともに神経細胞の有意な脱落が示された。この動物を用いて受動回避行動を用いた記憶試験を行ったところ。アミロイドβを注入した動物群では有意な記憶保持低下が示された。すなわち、アミロイドβ注入タウマウスはアルツハイマー病で引き起こされる、神経原線維変化形成、シナプス減少、神経細胞死さらに記憶障害を示すことが明らかとなった。この動物ではGSK-3βの活性化が起こっているとが明らかとなったので、このマウスモデルにGSK-3βの抑制剤の一つであるLiClを投与したところ、神経原線維変化、シナプス減少神経脱落、記憶障害のいずれもが改善された。このことはGSK-3βの活性化はアミロイドβが作用するかなり初期の部分で引き起こされていると考えることができる。さらにGSK-3の抑制がアルツハイマー病治療薬となる可能性が示された。
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