Otx2/Emx2ダブル欠損マウスならびOtx1/Emx2ダブル欠損マウスを作成し、終脳形成におけるOtx遺伝子とEmx遺伝子との協働機能の解析を試みた。発生後期の胚の組織学的検討より終脳背側部および間脳領域(視床上部、視床)の欠損が認められ、両遺伝子が前脳形成に重要な役割を果たしていることが明らかとなった。発生初期(領域形成期)での各種分子マーカーを用いた解析の結果、E8.5(6 somite stage)では既にOtx2遺伝子発現の減少かつ発現領域の縮小が認められ、Emx2遺伝子発現が生じる3 somite stageで、中脳マーカーの発現が前方へ広がり、領域形成機構に変化が生じていることが明らかとなった。Otx2/Emx2ダブル欠損マウスとOtx1/Emx2ダブル欠損マウスで共通に間脳領域の欠損が認められたことより、Emx2遺伝子が間脳領域の形成に必須であると考えられる。更に、Emx1/Emx2ダブル欠損マウスの解析から、原皮質領域に相当する海馬(歯状回、CA領域)、海馬采の欠損ならびに天井板領域の拡大を認めたが、同様な異常はEmx2/Otx2ダブル欠損マウスにおいても認められた。また、Emx1/Emx2ダブル欠損マウスならびにOtx2/Emx2ダブル欠損マウスの解析より、終脳皮質層構造の形成異常がより顕著に認められた。組織学的検討から、新皮質領域は形成されてはいるが、正中部の形成不全が明らかで、細胞増殖、神経細胞の分化には大きな変化は認められなかったが、リーリン陽性/カハールレチウス細胞の形成が全く認められないこと、サブプレートニューロンも形成されていないことが明らかとなった。更にスライスカルチャーの結果、変異マウスでは正中隆起からの神経細胞の移動が起こっていないことが明らかとなり、原皮質領域ならびに皮質層構造形成にOtx、Emxファミリー遺伝子間の特異的相互作用が大きく関与していると考えられる。
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