研究概要 |
本研究は、腫瘍抑制遺伝子p53の突然変異(C→T変異)のホットスポットは、シトシンのメチル化部位としても知られているCpG部位に存在する。本研究では、このC→T変異が、5-メチルシトシンの酸化産物の一つである、5-フォルミルシトシンの生成により誘発されたものである、という作業仮説を検証することを目的とした。 5-フォルミルシトシンの前駆体(5-(1,2-dihydroxyethyl)cytosine)のフォスフォロアミタイト体を数ステップにより合成した。得られたフォスフォロアミダイト体をビルディングブロックとし、DNA合成機を用いてオリゴヌクレオチドの固相合成を行った。得られた前駆体オリゴヌクレオチドを、逆相C18カラム、逆相C18 HPLC、陰イオン交換 HPLCを用いて精製した。さらに、前駆体オリゴヌクレオチドをNalO_4による酸化により5-フォルミルシトシンを含むオリゴヌクレオチドへと誘導し、逆相C18 HPLC、陰イオン交換HPLCを用いて高純度に精製した。 5-フォルミルシトシンを含むオリゴヌクレオチドを用いて、部位特異的に5-フォルミルシトシンを含むプラスミドDNAの構築を行った。サル由来のCOS-7細胞にトランスフェクションし、増殖したプラスミドDNAを分析した。その結果、5-フォルミルシトシンは変異誘発能が8-ヒドロキシグアニンを若干下回る程度であることが明らかになった。予想とは異なり、C→T変異以外の変異を主に誘発した。従って、CpG部位におけるC→T変異の原因は5-フォルミルシトシンではなく、他の5-メチルシトシンの酸化産物により誘発されたものであると推測された。
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