モデル生物を利用した染色体異常を発生する変異遺伝子群の解析

2003 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 13214008
• 研究機関: 東北大学
• 研究代表者: 東谷 篤志 東北大学, 大学院・生命科学研究科, 教授 (40212162)
• キーワード: 発がん / 染色体異常 / DNA損傷 / DNA修復 / 細胞周期 / チェックポイント / アポトーシス / ユビキチン

研究概要

ヒトの発がんとその防御機構に密接な関連性が知られているDNA損傷の修復機構、チェックポイント制御機構ならびにユビキチン系分解機構などに、それぞれ関連する遺伝子群について、それら制御機構が破綻した際に生じるゲノムの不安定化やアポトーシスへの影響について、モデル生物線虫のオルソログを用いて解析を行っている。昨年度までの研究でataxisa telangiectasia(AT)関連遺伝子の線虫オルソログCe-atl-1と相互作用する遺伝子を数種類同定し、今回それらの機能解析を行ったところ、少なくとも内2種類の遺伝子は、Ce-atl-1と同様に、DNA損傷時に生じるアポトーシスの過程に必須であることを見出した。一方で、この2種類はCe-atl-1と異なり、DNA損傷の修復には関与しないことも確認された。また、VHL癌抑制遺伝子と相互作用することが知られているRBX1の線虫オルソログCe-rbx-1についても機能解析を行った。Ce-rbx-1のRNAi法による発現抑制は、M期の染色体凝縮・分離分配が異常になり、高頻度に娘細胞に染色体異常が蓄積すること、ならびにM期特異的なピストンH3セリン10のリン酸化が抑制されることを明らかにした。

研究成果

• [文献書誌] Sasagawa, Y., Urano, T., Kohara, Y., Takahashi, H, Higashitani A.: "Caenorhabditis elegans RBX1 is essential for meiosis, mitotic chromosomal condensation and segregation, and cytokinesis."Genes Cells. 8. 857-872 (2003)
• [文献書誌] Takanami, T., Zhang, Y., Aoki, H., Abe, T., Yoshida, S., Takahashi, H., Horiuchi, S., Higashitani, A.: "Efficient repair of DNA damage induced by heavy ion particles in meiotic prophase I nuclei of Caenorhabditis elegans."J.Radiat.Res.. 44. 271-276 (2003)
• [文献書誌] Takanami, T., Mori, A., Takahashi, H., Horiuchi, S., Higashitani, A.: "Caenorbabditis elegans Ce-rdh-1/rad-51 functions after double-strand break formation of meiotic recombination."Chromosome Res.. 11. 125-135 (2003)