研究課題/領域番号 |
13214018
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
小池 和彦 東京大学, 医学部附属病院, 教授 (80240703)
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研究分担者 |
森屋 恭爾 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (00272550)
三好 秀征 東京大学, 医学部附属病院, 医員
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キーワード | 肝細胞癌 / トランスジェニックマウス / コア蛋白 / ROS / MAPK / AP-1 / インスリン抵抗性 |
研究概要 |
16ヶ月齢以降に肝細胞がんを発生するC型肝炎ウイルス(HCV)トランスジェニックマウスをモデルとして、肝発がんにおけるウイルス側因子として、HCVコア蛋白が果たす役割を検討した。コア蛋白は、組織学的な炎症像不在下に酸化ストレス(ROS)の産生を増強したが、その産生には肝細胞ミトコンドリア中の電子伝達系障害が大きな役割を果たしていた。一方、コア蛋白は正常肝細胞において脂質代謝および細胞増殖関連遺伝子の発現を修飾し、さらにMAPKシグナル伝達経路のうちJNKを活性化し、AP-1の活性化、Cdk4、cyclinD1の発現上昇へと続き、細胞増殖をもたらすことも明らかとなった。HCVは、酸化ストレスと細胞内遺伝子発現・シグナル伝達の双方に影響を与えることによって、肝細胞がんの発生に強く関わっていると推定された。また、C型肝炎におけるインスリン抵抗性が、HCVそのものによって引き起こされる病態であることが明らかにされ、肝線維化、肝発がんに影響を与えることが示唆された。抗ウイルス剤以外の肝発がん抑制法開発のため、ミトコンドリア保護作用をもつ薬剤が本マウスモデルを用いて評価され、いくつかの薬剤がC型肝炎の病態を改善することが明らかとなった。今後の肝発がん研究・治療に新しい視点を与えるものと期待される。
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