研究概要 |
11q23転座型白血病の細胞株と新鮮検体を用いて、転座の相手による発現の相違をDNA Chipを用いて検索し、下流の標的遺伝子を探索した。t(4;11)-とt(11,19)-白血病の細胞株各5株と新鮮検体各8例からRNAを抽出し、cDNAを合成し、Affymetrix社のDNA Chip(12,000個)により発現プロファイルの解析を行った。t(4;11)とt(11,19)の発現プロファイリングは非常に類似していたが、両方を比較すると、t(4;11)のみ発現している遺伝子が10種、t(11;19)のみに発現している遺伝子が12種みられ、両方に共通して発現がみられる遺伝子がHOXA9,HOXA10等15種にみられた。これらの遺伝子の発現をreverse transcriptase(RT)-polymerare chain reaction (PCR)でチェックしたところ、ほぼアレイの発現と一致していた。MLL再構成例の共通の標的遺伝子および転座相手の相違によるMLLのキメラ遺伝子の下流の標的遺伝子の相違を探索するため、これらの遺伝子を詳細に検討している。さらに新鮮白血病各5例を集めて共通する下流遺伝子をしぼる作業を進めている。今年度はさらに乳児急性骨髄性白血病のt(X;11)(q22;q23)のXq22領域よりcDNA panhandle PCR法を用いて新規遺伝子のSEPTIN6をクローニングした。この遺伝子はこれまでのMLLの相手遺伝子CDCREL1,AF17q925と相同性がみられ、SEPTIN familyと思われた。SEPTIN6とAF17q25は、成人組織では脳を除いたほとんどの組織で強く発現していたが、胎児組織では、SEPTIN6の発現は心臓、肺、脳、肝臓では発現していたが、AF17q25は肺、脳、肝臓での発現が強かったのに対して心臓ではほとんど発現していなかった。このMLL-SEPTIN6キメラ遺伝子をもつ乳児AMLは、3例ともFAB分類M1とM2であり、従来のMLL再構成のあるM4,M5とは異なっていた。現在、SEPTIN6遺伝子をES細胞に導入し、ノックアウトマウスの作成を行っている。
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