本研究では、Racの発がんおよび転移浸潤における機能をin vivoで明らかにするため、Rac1をコンディショナルにノックアウトするマウスを作成する。方法としては、rac1ノックアウトマウスをrac1染色体DNAのBACトランスジジーン(flox-rac1-EGFP Tg)でレスキューする。このマウスをRac1ヘテロ型マウス(rac1+/-)マウスと連続して交配することによって、(rac1-/-)/flox-rac1-EGFPTgマウスを作成する。このマウスにCreを作用させた細胞ではRac1が欠損すると同時にEGFPが発現する。本年度はフィーダーを必要としない胚性幹(ES)細胞にrac1ターゲッティングベクターを導入し、rac1(+/-)マウスを作成することに成功した。この系では、従来必要とされるフィーダー細胞の培養を必要とせず、ノックアウト細胞作成のための作業の簡略化ができる。さらに、Rac1BACクローンをマウス129BACライブラリーより単離し、制限酵素地図をパルスフィールド電気泳動、サザンハイブリダイゼーションにより決定した。rac1遺伝子の開始コドンの5'上流のノンコーディングエキソンにloxPを挿入したDNAをシャトルベクターに挿入し、それをBACを持つ大腸菌に導入することで、大腸菌内で、BACDNAとシャトルベクター中のDNAの間で相同組換えを生じさせ、BAC上にloxP配列を導入した。さらに、同様の方法を用いてloxP-EGFPをrac1遺伝子のpolyA付加シグナルの下流に導入し、目的のTgコンストラクト(flox-rac1-EGFP)を作成した。さらに、約100kbのflox-rac1-EGFP-DNA断片をBACベクターから分離精製し、B6受精卵にインジェクトした。現在までにflox-racl-EGFPTgを独立に4系統得た。
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