研究概要 |
ARFはヒト染色体9P21部位にコードされ、多くの腫瘍で欠失、プロモーターメチル化などによって不活化されていること、遺伝子改変マウスでヒト腫瘍と類似したスペクトルの腫瘍が多発したこと(Kamijo T et al, Cell 1997 ; Cancer Res 1999)からがん抑制遺伝子とみなされている。ARFの機能はp53のユビキチンリガーゼであるMDM2を不活化することによって、p53の蛋白量を増加させ、下流遺伝子群の転写を促進することと考えられてきた(Kamijo T et al, PNAS 1998)。ARFによってもたらされる現象の内、細胞死誘導についてはその分子機構はこれまで解明されていなかった。 われわれは本研究班においてこの分子機構の解明に携わり、すでにp53依存性の機構を解明してきた(Nakazawa Y et al., J Biol Chem in revise)。さらにARFによるp53非依存性アポトーシスの系を確立しこの分子機構を解析したところ、ARF C末ペプチドの発現がp53非依存性およびミトコンドリア非依存性のストレスを細胞にもたらす結果、ERK 44/42kの活性化を引き起こし、effector caspaseであるcaspase-7を活性化することが示された。加えて、このcaspase-7の活性化はEFKの活性化によってもたらされることが明らかになった。このARF依存性/p53非依存性の発癌抑制機構の解明はp53変異悪性腫瘍に対する新たな分子治療の開発につながる可能性が考えられ、さらに解析を行いたい。
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