研究概要 |
C型肝炎ウイルス・コア蛋白を発現するトランスジェニックマウスの肝癌発症機構を解明するために、多種の蛋白因子の発現量を調べたところ、核内受容体の一種であるPPAR(ペルオキシソーム増殖剤活性化受容体)alphaの機能的活性化が加齢進行と共に亢進することが明らかになった。PPARalphaの機能的活性化は2種の要因から成ることが分かった。一つは、C型肝炎ウイルス・コア蛋白による核内PPARalphaの安定化であり、他の一つは、このマウスに特有な脂肪肝に由来するPPARalpha配位子(長鎖脂肪酸)の核内含量の増加である。PPARalphaの機能的活性化は、発癌遺伝子産物(cFos, cMyc, cHa-Ras)の増加・細胞周期調節因子(cyclin D1,CDK1/2/4,PCNA)の増加・アポトーシスの抑制(dUTP nick end-labeling assayおよびcaspase assay結果によるアポトーシス能の低下)を特定の細胞にもたらし、加齢依存的な異常細胞の出現をもたらした。さらに、異常細胞は加齢依存的に微集塊を形成する傾向がみられ、新たな多中心的肝癌発生機構の提唱に到った。加えて、個体レベルにおけるPPARalphaの機能的活性化の重要性を確定するために、C型肝炎ウイルス・コア蛋白を発現するPPARalphaノックアウトマウスを多数作製することに成功した。現在、これらのマウスの加齢は順調に進んでおり、平成14年内に肝発癌率に関する結果が得られるものと期待される。また、肝発癌の予防については、核内PPARalphaの活性化制御が発癌阻止につながる可能性が高く、極めて重要な発見・展開が期待されている。
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