研究課題/領域番号 |
13214042
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
鎌田 徹 信州大学, 医学部, 教授 (40056304)
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研究分担者 |
古田 秀一 信州大学, 医学部, 助手 (80126705)
谷口 俊一郎 信州大学, 医学部, 教授 (60117166)
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キーワード | Ras / Moxl / 発癌遺伝子 / 活性酸素 / メタロプロテアーゼ / NADPH oxidase / MAPキナーゼ / 情報伝達 |
研究概要 |
本研究の目的は、低分子量G-蛋白Rasによる発癌過程において、活性酸素産生癌遺伝子Moxlがいかなる機能的役割を果すかを明らかにし、多段階発癌の機構を検討することである。 1.計画:Moxlが、Rasによる細胞の癌化、及び増殖コントロールを媒介しているかを追及した。 成果:血清、EGF刺激や活性型Rasの細胞内導入により、Moxlの転写が誘導されることを見出した。さらに、このMoxlの発現誘導は、MAPKKの阻害剤及び不活性型MAPKによって抑制され、活性型MAPKKによって上昇した。Ras-transformed cellsに、anti-sense Moxlベクターから構築したmRNAを導入すると、正常細胞に類似した形態へと変化し、細胞増殖速度、及び軟寒天上のanchorage-independent growthが抑制された。 2.計画:メタロプロテアーゼMMP-2/9、及び膜型MT-1/2の遺伝子発現がMoxlによって、産生される活性酸素の標的になっているかを検討する。 成果:これらMMPcDNAのプライマーを用いて、RT-PCRで解析中である。さらに、実際のヒト癌でのMoxlの寄与を追及するために、各種ヒト癌組織及びヒト癌細胞でのMoxlの発現レベルをスクリーニング中である。本研究により、Rasによる細胞の癌化には、Ras-Raf-MAPKK-MAPKによって誘導されたMoxlが産生する活性酸素を必要とするという新しい知見が得られた。この発見は、活性酸素の細胞内蓄積が癌化のプロモーションになりうるという定説と調和する。この場合我々は、活性酸素が遺伝子傷害をもたらすだけでなく、細胞癌化のシグナリングにおいて、活性酸素が情報伝達分子として作用するモデルを提案する。今後の問題としてこのMoxlによって産生された活性酸素の下流の標的を解明することが急務となる。その試みとして、Moxlがmetalloproteaseの発現を誘導し、癌細胞の浸潤能を高めるか否かを検討中である。また、他の増殖制御や細胞形態制御機構、特に低分子量G蛋白Rac1/RhoとMoxlが如何にクロストークするかを解きらかにする必要がある。
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