本年度はHPVの遺伝子産物の中で、その生物活性がよく分かっていなかったE4について上皮系細胞などを用いた解析を進めた。E4遺伝子産物はHPVの生活環の中で後期過程に発現することから、ウイルス複製やウイルス粒子放出に関与していると考えられてきた。しかし、その生物活性に関してはほとんど報告がなかった。 この解析によって、E4に細胞周期をG2/M期で停止させる活性があることを見出した。その機能発現にはE4の中央ドメインが重要であり、過去に報告されていたサイトケラチンとの相互作用とは独立であることが分かった。E4発現により増殖停止した細胞では、DNA合成が引き続き起こっており、染色体数のaneuploidityが高まる傾向にあることも見出した。 また、HPV陽性癌細胞において、ウイルスのコードするがん遺伝子であるE6/E7の発現を抑えることで、細胞増殖を抑制できることを見出した。この時、細胞内のテロメレース活性が低下しており、その原因はE7の発現抑制であることも確認できた。E7によるhTERT発現調節機構についても検討し、E7-pRB経路が転写レベルでhTERTを活性化していることを確認し、その制御にE7を介したc-mycの活性化が関わっている可能性を示した。 皮膚モデルにおいては、自己複製能を持つHPVレプリコンを作成し、細胞分化に応じたウイルス発現制御を検討することが可能となった。今後はこの解析系を用いてE6/E7やE4など、ウイルス遺伝子産物の役割を明らかにしたい。
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