DNA複製に伴うゲノム不安定化の防御機構に重要な役割を果たす因子を明らかにし、その働きを知る事を目的とする。 1.DNA複製中間体に結合する因子の検出 DNA複製中間体(複製フォーク)と同様の構造を持つモデル分子(Dループ)を作成した。このDNA分子と特異的に相互作用する因子を検出する系をDNA複製に関わる蛋白を多く含むアフリカツメガエル卵抽出液を用いて確立した。この系を利用して、染色体異常を引き起こす可能性がある停止、あるいは、衝突した複製フォークのプロセッシングに関わる因子のアフリカツメガエル卵抽出液からの単離・精製を目指している。 2.DNA複製フォーク構成因子とゲノム不安定化の防御機構に於ける役割 DNA複製に必須、且つ、複製フォークの構成因子であるMCMヘリケースやこのMCMやDNAポリメラーゼと相互作用するCdc45蛋白の温度感受性分裂酵母を利用した実験結果から、MCMヘリケースとCdc45蛋白が停止した複製フォークのプロセッシングに重要な役割を果たすことを明らかにした。MCM、Cdc45の変異が紫外線やヒドロキシウレア(DNA合成阻害剤)に感受性をもたらし、同一染色体間や異染色体間でのDNA組換えを減少させる事を明らかにした。更に、MCM、Cdc45がDNA修復に働くRqh1(ヒトBLM/WRN相同遺伝子)と協調的に紫外線照射によるDNAダメージを乗り越える事や、MCM、Cdc45の変異が細胞周期チェツクポイント因子であるCds1(ヒトChk1相同遺伝子)やMrc1(Cds1と相互作用する)の変異株のヒドロキシウレア感受性を抑制する事が分かった。
|