研究概要 |
我々は,JunやFos, Mafといった癌関連転写活性化因子と拮抗し転写抑制を行うBach1およびBach2に着目し,TPA応答配列(TRE), Maf結合配列(MARE), 酸化ストレス応答配列(ARE)などを介する遺伝子応答の生理的意義,およびその脱制御を理解することを目指した。本年度の研究から,Bach2による酸化ストレス応答性アポトーシスの誘導には,核内構造体であるPromyelocytic leukemia (PML) bodyでの部位特異的転写制御が関与すること,そしてこの過程にはBach2のSUMO化が関わることを明らかにした。一方,Bach1に関しては,酸化ストレス防御において重要なheme oxygenase-1 (HO-1)の抑制に加え,細胞周期の進行にも関わることを見い出した。これまでの私たちの一連の研究から,Bach1やBach2は増殖や細胞死の制御に予想外な形で関与することが明らかになりつつあり,しかもBach1とBach2は構造上類似するにも関わらず生理的作用には特性が認められている。これら因子の機能をさらに追求することによりAP-1活性の形成機構とその生理的および病理的意義に関する理解が深まるものと期待される。
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