研究概要 |
Bach2については,NIH3T3細胞での過剰発現実験を行いBach2は核排出シグナルを持ち通常は細胞質と核をシャトリングしていることを見いだした。酸化ストレスはこの核排出を特異的に抑え,Bach2の核への貯留を増強し,細胞死を誘発する。この際,Bach2はPMLボディー周辺に集積し,同部位での遺伝子発現を選択的に抑えた。したがって,Bach2は何らかの標的遺伝子の発現を抑制することにより細胞死へと細胞を至らしめることが推察された。さらに,Bach2のSUMO化がPMLボディー周辺への集積に関わることを見いだした。 Bach2ノックアウトマウスを詳細に解析することにより,Bach2はBリンパ球の分化,特に成熟Bリンパ球から抗体産生形質細胞へ至る段階に必須であることを発見した。この分化段階では細胞死と増殖が極めて活発に起きることから,Bach2はこのような細胞応答にも関わることが予想された。 Bach1に関しては,ヘムがBach1に直接結合してそのDNA結合を抑えるとともに核外排出を促進することを見いだした。Bach1は少なくとも4カ所のヘム結合部位を有する。残念なことにDNA結合阻害に関わるヘム結合部位は未だに同定できていない。しかし,核外排出を制御するヘム結合部位を決定することはできた。さらにBach1はストレス防御に重要なヘムオキシゲナーゼ1の発現を制御すること,また,血管平滑筋等では増殖にも重要であることを見いだした。今後は,増殖に関わる下流標的遺伝子を同定しその機能を理解することが重要となる。
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